<秋人>
いや、そう力説されても困るんだが。 それから机をたたくな、コーヒーがこぼれる。 |
<秋人>
それは……困った友達だな。 |
<双葉>
なんでよ。私なにか間違ってる? |
<秋人>
……さあね。 |
<秋人>
あ〜。うん、そうかスゴイなそれは。おお〜! |
<双葉>
ちゃんと聞いてよ! |
<秋人>
あー。へいへい。 |
<秋人>
惨敗なのにおしかったのか。それは悔しいな。うん、とても悔しい。 |
<双葉>
ひょっとしてバカにしてる? |
<秋人>
滅相もない。 |
<双葉>
あんたねぇ。せめて、おごってあげたコーヒー飲み終えるまでくらい、少しは真面目に聞いてくれてもいいんじゃない? |
<秋人>
……ちっ |
<双葉>
うん。それに関しては、ちょっと反省してる。知っていればもっと上手く立ち回れたと思うの。例えあの“クドケン”が相手だったとしてもね。 |
<秋人>
そうか。反省したなら、一つ成長したんだな。ならもう次は負けないさ。大丈夫。お前なら出来る。俺は信じてる。 これ、テイクアウトして帰っていいか? |
<双葉>
良いわけねーだろ。 |
<双葉>
何て事を考えながら、それでも呼び出されたこの店にやって来た……そんな時だったのよ。うん。今日はツイてる! |
<秋人>
うん? |
<双葉>
こうなりゃ私だって。 よっこい…… しょ! |
<秋人>
おま、なに脱いで!? |
<双葉>
備えあれば憂いなし! |
<秋人>
って。わざわざ下に、制服着込んでたのかよ? |
<双葉>
そりゃそうよ。向こうは多分、学校帰りのはずだしね。ならこっちも、それなりの装束でお出迎えするべきでしょ? 相手が相手だし。この格好の方が、まだ対等に渡り合える気がするってもんだわ! ビシッ! |
<秋人>
いやまあ、何でもいいけどよ。とりあえずあれだ。脱ぎ捨てた上着を拾え。他の客の邪魔になる。 もたもたしてたら踏みにじるぞ。 |
<双葉>
ちょ! 何すんのよ、ってか本当に踏むな! |
<秋人>
(っち。にじり損ねたか) |
<双葉>
あんた……そう言えば、そういう奴だったわよね。 |
<秋人>
お前の中の俺像になんて、興味ないな。 |
<双葉>
あんたって奴は…… 言っとくけど! この店のコーヒー、安くないんだからね! 外見からして高級そうな感じの喫茶店だとは思ったけど。まさか1グラスで1200円税別とか。 ぼったくりもいいとこよ。はぁ。 |
<秋人>
千……二百…… |
<双葉>
呼び出されたんじゃなきゃ、絶対入ったりしないわよね。 |
<秋人>
チュー! チュチューーー! ジュルルルル! |
<双葉>
値段を知った途端に、それか。 |
<秋人>
(一滴も残さん) |
<双葉>
あぁ……何だかどっと疲れたわ。戦いはこれからだってのに。 |
<秋人>
ジュルレレレレ! カランカラン! ガリガリガリ! |
<双葉>
……氷まで。 |
<秋人>
よし……完食だ。 |
<双葉>
はいはい、気は済んだ? |
<秋人>
店員のおねーさん! オカワリください! |
<双葉>
ザケンナ、ブットバスゾ、テメー |
<秋人>
おおう。 おいおい、冗談だって。怒るなってば。 |
<双葉>
はぁぁぁぁ…… |
<秋人>
まあ何だかよく分からんが、とにかくあれだ。頑張ってちょーだいな。とまあ、そう言うわけなんで…… ご馳走さん。もう二度と、会うこともないだろうぜ。 |
<双葉>
は? 帰れるわけ、ないでしょ? |
<秋人>
何でだよ…… |
<双葉>
飲んだ。 |
<秋人>
へ? |
<双葉>
完食した。なら協力して。 |
<秋人>
おい、まさか…… |
<双葉>
下心もないのに、善意であんたにコーヒー奢ったげるわけないじゃない。 |
<秋人>
……え、ちょ。これって、そう言うコーヒーなのか? |
<双葉>
そうだけど、何か? って言うか、分かるでしょフツー? |
<秋人>
うべろれれれれ…… |
<双葉>
グラスに戻すな! 今さら遅いから! |